2019年 1月

【働き方改革②】年次有給休暇の時季指定義務

「年5日の年次有給休暇の時季指定義務」は、大企業・中小企業関係なく、「2019年4月」からすでに導入されています。ここでは最新の「改正労働基準法Q&A」(平成31年4月厚生労働省労働基準局)から一部抜粋して、特に注意したい点を挙げておきます。なお、基本的な内容については「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(厚生労働省)をご参照いただきますようお願いします。

特別休暇の取り扱いについて

(3-12)Q 事業場が独自に設けている法定の年次有給休暇と異なる特別休暇を労働者が取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することができますか。
A 法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(たとえば、法第115条の時効(2年間)が経過した後においても、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇を上乗せするものとして付与されるものを除きます。以下同じ。)を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することはできません。

(3-34)Q 当社では、法定の年次有給休暇に加えて、取得理由や取得時季が自由で、年次有給休暇と同じ要件で同じ賃金が支給される「リフレッシュ休暇」を毎年労働者に付与し、付与日から1年間利用できることとしています。この「リフレッシュ休暇」を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇の日数から控除してよいでしょうか。
A ご質問の「リフレッシュ休暇」は、毎年、年間を通じて労働者が自由に取得することができ、その要件や効果について、当該休暇の付与日(※)からの1年間(未消化分はさらに次の1年間繰り越して取得可能なもの)において法定の年次有給休暇の日数を上乗せするものであれば、当該休暇を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇の日数から控除して差し支えありません。(※当該休暇の付与日は、法定の年次有給休暇の基準日と必ずしも一致している必要はありません。)

《解 説》
特別休暇については、
(原 則) 時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除できない
(例 外) 法定の年次有給休暇と全く同じ性質の休暇ならば控除できる
ということのようです。ただし、上記の太字部分で強調したとおり、「未消化分をさらに次の1年間繰り越して取得可能」な特別休暇を規定する会社がそもそも存在するのかなと思います。




【働き方改革①】時間外労働の上限規制について

「時間外労働の上限規制」は、中小企業では「2020年4月」(※大企業では「2019年4月」)から導入されます。ここでは最新の「改正労働基準法Q&A」(平成31年4月厚生労働省労働基準局)に記載された設問から、特に注意したい点を挙げておきます。なお、基本的な内容については「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(厚生労働省)をご参照いただきますようお願いします。

●通常予見することのできない業務量の大幅な増加

(2-6)
Q
 特別条項により月45時間・年360時間(対象期間が3ヵ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間)を超えて労働させることができる「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」(法第36条第5項)とは具体的にどのような状態をいいますか。
A 「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいうものであり、「通常予見することのできない業務量の増加」とは、こうした状況の一つの例として規定されたものです。その上で、具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があります。

《解 説》
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」という法文上の文言を読めば、「だったら、通常予見できる業務量の大幅な増加ならば特別条項が使えないのかな」と思うかもしれません。実は『通常予見することのできない業務量の大幅な増加』という部分は具体例のひとつであるとのことです。「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(P12)では、「予算、決算業務」「ボーナス商戦に伴う業務の繁忙」といった予見可能な事由の例が記載されています。

●出口規制の通算について

(2-7)(※関連内容2-32)
Q
 同一企業内のA事業場からB事業場へ転勤した労働者について、「時間外労働と休日労働の合計で、単月100時間未満、複数月平均80時間以内」の要件(法第36条第6項第2号及び第3号)は、両事業場における当該労働者の時間外労働時間数を通算して適用しますか。
A 「時間外労働と休日労働の合計で、単月100時間未満、複数月平均80時間以内」の要件(法第36条第6項第2号及び第3号)は、労働者個人の実労働時間を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は法第38条第1項の規定により通算して適用されます。

《解 説》
【同一企業内の転勤の場合】
上限規制は大きく分けて二段階あり、事業場が36協定を作成する段階での規制が「入口規制」、運用段階での規制が「出口規制」となっています。「時間外労働と休日労働の合計で、単月100時間未満、複数月平均80時間以内」という要件は、「出口規制」に該当し、労働者個人の実労働時間を規制するものなので、法38条第1項(労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用について通算する)の規定により、前後の事業場での時間外・休日労働の時間数は通算して計算しなければなりません。ただし、「1か月の限度時間を超えて労働させることができる回数は年6回まで」という回数要件(法第36条第5項)については通算しません。

【転職の場合】
「転職」の場合においても同様で、法38条第1項により通算すべきとなっており、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をもとに、労働者が前に働いていていた事業場での労働時間の実績は「労働者からの自己申告により把握することが考えられる」と説明しています。ただし、現実問題として転職先が転職元の正確な時間外・休日労働時間情報を入手することは困難ではないでしょうか。

(2-19)
Q
 時間外労働の上限規制(法第36条の規定)が全面的に適用される業務(以下「一般則適用業務」といいます。)と時間外労働の上限規制の適用除外・猶予業務等との間で業務転換した場合や出向した場合の取扱いはどのようになりますか。
A 
【業務転換の場合】
同一の36協定によって時間外労働を行わせる場合は、対象期間の途中で業務を転換した場合においても、対象期間の起算日からの当該労働者の時間外労働の総計を当該36協定で定める延長時間の範囲内としなければなりません。したがって、例えば法第36条の適用除外・猶予業務から一般則適用業務に転換した場合、当該協定における一般則適用業務の延長時間(最大1年720時間)から、適用除外・猶予業務等において行った時間外労働時間数を差し引いた時間数まで時間外労働を行わせることができ、適用除外・猶予業務等において既に年720時間を超える時間外労働を行わせることができません。なお、時間外労働と休日労働の合計で、単月100時間未満、複数月80時間以内の要件(法第36条第2号及び第3号)は、時間外・休日労働協定の内容にかかわらず、一般則適用業務に従事する期間における実労働時間についてのみ適用されるものです。

【出向の場合】
出向先において出向元とは別の36協定の適用を受けることとなる場合は、出向元と出向先との間において特段の取決めがない限り、出向元における時間外労働の実績にかかわらず、出向先の36協定で定める範囲内で時間外・休日労働を行わせることができます。ただし、一般則適用業務の実労働時間については、時間外労働と休日労働の合計で、単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(法第36条第6項第2号及び第3号)を満たす必要があり、法第38条第1項により出向の前後で通算されます。

《解 説》
前の設問で【同一企業内の転勤】はもちろんのこと【転職の場合】【出向の場合】であっても、原則として「単月100時間未満、複数月平均80時間以内」の要件については、労働者個人単位で通算して計算すると説明していました。ところが【業務転換の場合】、つまり上限規制適用除外・猶予業務から職種変更により適用業務に変わる場合(例:自動車運転業務→営業職)は、年720時間の総労働時間については通算しなければならないが、「単月100時間未満、複数月平均80時間以内」の要件は通算しなくてよいとなっています。

●対象期間をまたがる通算について

(2-24)(※関連内容2-8)
Q 時間外労働と休日労働の合計が、2~6か月間のいずれの平均でも月80時間以内とされていますが、この2~6か月は、36協定の対象期間となる1年間についてのみ計算すればよいのでしょうか。
A 時間外労働と休日労働の合計時間について2~6か月の平均で80時間以内とする規制については、36協定の対象期間にかかわらず計算する必要があります。

《解 説》
上限規制は36協定の対象期間(1年)ごとに計算すればいいと思いがちですが、「複数月平均で80時間以内」という規制については、複数の36協定の対象期間をまたいで適用されるため、計算するときは注意が必要です。

●健康確保措置について

(2-37)(※関連内容2-12、2-13、2-36)
Q 指針に示された健康確保措置のうち、心とからだの健康問題についての相談窓口を設置することについて、相談窓口の設置さえ行えば、措置を果たしたことになるのでしょうか。また、この場合、どのような内容について記録を保存すればよいでしょうか。
A 心とからだの健康問題についての相談窓口については、それを設置することにより、法令上の義務を果たしたことになります。その際、労働者に対しては、相談窓口が設置されている旨を十分周知し、当該窓口が効果的に機能するよう留意してください。また、この場合の記録の保存については、相談窓口を設置し、労働者に周知した旨の記録を保存するとともに、当該36協定の有効期間中に受け付けた相談件数に関する記録も併せて保存してください。

《解 説》
36協定(特別条項)では、限度時間を超えた労働者に対し、健康確保措置を講じなければなりませんが、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」(厚生労働省告示第323号)で「以下のものから定めることが望ましい」と示されています。
① 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること
② 深夜業(22時~5時)の回数を1ヵ月について一定回数以内とすること
③ 終業から始業までの一定時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を
  確保すること
④ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を
  付与すること
⑤ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
⑥ 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めて
  その取得を促進すること
⑦ 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
⑧ 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に
  配置転換をすること
⑨ 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等に
  よる保健指導を受けさせること。
⑩ その他

「わかりやすい解説」の36協定届の記載例(P14)では「以下の“いずれか”の健康確保措置を講ずることを定めてください」と記載されており、どれか1つでも構いません。「②深夜業の回数制限」や「③終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)」を選んだとしても、深夜業の回数や休息時間の時間数に制限があるわけではなく、業務の実態等を踏まえて労使間で決めればよいことになっています。逆に以下のQ&Aのとおり、少なくとも「①医師の面接指導」を選んだ場合は、限度時間を超えるたびに実施することになります。

(2-36)Q 36協定の協定事項である「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(則第17条第1項第5号)は、限度時間を超えるたびに講じる必要がありますか。また、限度時間を超えてからどの程度の期間内に措置を実施すべきですか。
A 「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」(則第17条第1項第5号)は、原則として、限度時間を超えるたびに講じていただく必要があります。また、当該措置の実施時期については、措置の内容によっても異なりますが、例えば、「医師による面接指導」については、1ヵ月の時間外労働時間を算定した日(賃金締切日等から概ね1ヵ月以内に講じていただくことが望ましいです。






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